~ADHDでもADDでもないのに、私たちの集中は奪われている~『ハーバード集中力革命』(エドワード・M・ハロウェル)
□はじめに
皆さま、お疲れ様です。
集中力がミジンコレベルの求道者です。
本日のテーマは「集中力」。
皆さまは集中力がある方でしょうか?
昨今は、集中力の無い人が増えているとのことで……いえ、オッサンの説教にありがちな、「若い人は根性がない」的な話ではありませんよ~。
シンプルに言えば、人類の集中を妨げるような情報が増える一方である、という話です。
「金魚の集中力は9秒しか続かないとされています。では、現代人の集中力はどのくらい続くと思いますか」
こう質問されたら、あなたは何と答えるだろうか。
正解はなんと8秒。金魚よりも短いのだ。
『現代人の集中力持続は金魚以下!IT進化で激減』(ダイアモンドオンライン)
己を振り返ると、全くもってその通りだなあ、と思います。
何かスキマ時間があると、ツイッターとか見ちゃいますからね。
一週間を振り返って、どれくらいの時間、読書やトレーニングに集中できているかを考えてみるとゾッとしますし(皆さまの中にも同様の方がいらっしゃるんじゃないでしょうか?)、逆にSNSやネットサーフィンにどれくらいの時間を費やしているかを顧みるだけで、ホラーな気分が味わえます。
もちろん、ネットで癒されるんだったら、別に問題はないのです。
一番危険なのは、「別にネットがしたくてしている訳ではない人」、「止めたいのに止められない人」でしょう。
テクノロジーの進化と浸透によって、私たちはいつの間にか自分のコントロール権を奪われてしまっているのです。
(もちろん、テクノロジーは商売のため、コントロールを奪わせるようにデザインされているせいもありますが)
自分の人生がいつの間にか、自分の手から離れていってしまっている気がする……そんな貴方にオススメなのが、本日ご紹介する本です。
『ハーバード集中力革命』
(エドワード・M・ハロウェル)
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ハーバード集中力革命【電子書籍】[ エドワード・M・ハロウェル ]
あなたの周囲に、たとえばこんな問題はないだろうか――集中の邪魔になるものの蔓延、あふれかえるイライラの種、そこらじゅうで鳴り響くチャイムやアラーム、蔓延するデジタル依存症、会議中のSNSでの隠れたやりとり、精神的なストレス過剰、そして、何でも完璧にやろう、間に合わせようとする焦り。
(p03)
――どんな人でも、自分の集中を妨げる原因とストレスを調節する方法を学べば、事態をはるかにしっかりとコントロールできるようになり、より幸せで健康的かつ生産的になれると知っている。
(中略)
だからこそ、時間管理術やTODOリスト、効率的なマルチタスク化、整理術といった、よくあるアドバイスはどれも役に立たない。いずれも一時しのぎに過ぎないからだ。
そんな対策より、必要なのは集中力を鍛えなおすことである。
(p04)
作者はADD(注意欠陥障害)及びADHD(注意欠陥・多動性障害)の専門医で、ハーバード医学部で20年以上講師として勤めてきたベテランです。
彼の元には「自分もADDやADHDではないか」と来院する人たちが多数集まりますが、実際には殆どがそうではないと診断されるそうです。
彼らの症状自体は、ADDやADHDそっくりだというのに。
□ADTという環境型の症状
マルチタスクをこなし、プロジェクトをいくつもかけもちし、電話で話しながらメールを書き、会議から会議へと走りまわり、会議中には隠れてSNSにアクセスし、次の約束に間に合おうと必死になりながらもう1本だけ電話をかけ、目標を達成することも能力を十分に発揮することも出来なかったというイライラした気持ちで1日を終える……このような人たちは落ち着きがないどころではなく、本当のADD患者のように見える。
しかし、実際のところ、ほとんどの場合彼らは病気ではない。多くの人は、現代社会の重大な問題、すなわち私の呼ぶところのADT(注意欠陥特性)を抱えているだけなのだ。
(p7~8)
前半は本当に現代人の生活そもそもですね。
(私はこういう生活に耐えきれず3回退職しましたが)
常に仕事に追い回されて、息をつく暇もない職場環境。こんな中で集中できずに、すべてが中途半端、それどころかドンドン悪い方に転がっていく……そうして悩んで作者の診療を受けに行く人が多数いるのです。
ADDやADHDといった障害が遺伝的な原因によるのに対して、ADTは環境が原因である。すなわち、ADTは外部要因によって現れたり消えたりするものなのだ。
(p8)
遺伝的要因ではないため、ADD、ADHDではない。しかし、環境要因で似たような症状が現れる……それに対して、作者は「ADT(注意欠陥特性)」と名付けました。
しかもこのADTの恐ろしいところは、認知症のようにジワジワと進行してくるので、本人は気づかないことも多いそうです。
□ADTの6タイプ
この厄介なADTは、本書では6タイプに分類されており、そのうち1つは本当のADHDである。
(p19~23から要約)
①デジタル依存症
電子機器のスクリーンに見入っているときはハイになったり、安心感があるが、電子機器を見ていないと喪失感がある。
時間内に対処できる以上の仕事を抱え込み、次第に自分のペースを失い、焦点を失った行動を取るようになる。
創造的で起業家精神に富んだタイプで、アイデアは思いつくが、十分に育て上げるまで集中し続けられない。
④心配性
子供の頃の恐怖と不安の行動パターンを大人になっても持ち続けてしまい、健康にまで害を及ぼす
⑤おせっかい焼き
社内の悪い雰囲気をやわらげ、組織維持のために自分自身を犠牲にする「有害物取扱者」。
⑥ヘマばかり
ADTではなく、周りが気づいていない「本当のADHD」のせいで、組織だった行動がとれず、仕事が出来なくて苦しむ人。
……どうだったでしょうか。説明文には短くて載せきれませんでしたが、大抵の人は複数に当てはまるのではないでしょうか。
本書にはそれぞれの詳しいエピソードが紹介されおり、私的には全て「あるある」な話ばかりでした。
この中でも一番現代人に関わりの深いデジタル依存症をご紹介します。
□デジタル依存症
自分が何をしているかに気づかないうちに、レスは常に画面に向かってインターネットを使い続ける習慣に深入りし、ついには強迫観念まで抱くようになった。おかしな話だが、ほんの1、2分メールへのアクセスを絶っているだけで、彼はメールの通知音が恋しくてたまらなくなるのだ。
(p049)
これは、本当によく感じますね。私はツイ廃気味で、ついついツイッターを見てしまいます。それこそ、途中で「イカンイカン、作業に戻らねば」と思った数分後、無意識にケータイを取り出してツイッターを見てたり、もっとひどい時には、数時間没頭した後に気が付いたりします。
多分、程度に差はあれ、現代人には似たような症状に侵されていることと思います。
これらの習慣の悪いところは、私たちの精神的なエネルギーを奪い取る所です。
スティーブ・ジョブズやザッカーバーグは毎日同じような服を着て、決断するエネルギーを使わないようにしていたそうですが、正直SNSやネットを注視するのは、それと同等かそれ以上にエネルギーを消費していると思います。
証拠に、ネットサーフィンをした後に、「気分爽快!元気になった!」となる人は少ないかと思います。
それにも関わらず、つい見てしまい、他のことが手につかず……また面倒くさくなってケータイを見るという悪循環にハマってしまう。
……これが依存症の怖いところです。アル中にしろヤク中にしろ、別に楽しくて依存しているのではないのです
気分転換の筈が、いつの間にか沼にはまり込んでしまい、悪循環の渦に飲み込まれてしまうのです。
この悪循環から脱するにはどうしたら良いのでしょうか?
□おわりに
――というわけで、本書はこのような内容になっております(笑)
いやもうこの本は役に立つところが多すぎる!
しかも本文の編集や文体もよく、私も読んでるうちに引き込まれて内容のメモを忘れてしまうほど。
前にも書きましたが、たぶんこのADT6タイプは、複数タイプに当てはまる人が多いと思います。どれを読んでも「自分の症状と原因はこれだ!」というものに触れることが出来ますし、依存症のチェックリストや、対策方法、それぞれの依存症に至るエピソードなど、全ページを引用したいぐらいです(笑)
「自分の人生は他人に振り回されてばかりだ」「自分の置かれた状況の一体何が悪いのか」といった意見をお持ちの方が、自身を振り返るには最適な一冊となっています。
是非ともご入手いただき、人生の方針を見つめなおす手段としていただければ幸いです。
では、また次回。
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ハーバード集中力革命【電子書籍】[ エドワード・M・ハロウェル ]
□補足
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