求道者の平穏への道標

うつ病歴約10年、退職3回した私が、「平穏な人生を歩みたい!」と手探りで進んでいく記録。自己啓発、ビジネス書の感想メインです。

~「なかなか思い出せなかった単語を、ふと思い出す瞬間」の技術を応用する『ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法(スリニ・ピレイ)』


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□はじめに

 

皆さま、お疲れ様です。

なにかと追い込まれがちな求道者です。

 

「人間は本来、ネガティブな動物である」とは、よく自己啓発書で述べられている話ですが、私は輪をかけて内向的で、悩みがちな人間だったりします。

 

悩み始めると、毎日精神的に五里霧中で……それでも良い解決策というのも浮かばずに、日々過ごしています。

 

同じように、ぼんやりとした解決の見えない問題に悩まされている、という方も多いのではないでしょうか。

 

こんな毎日を変えられる、なおかつ科学的に根拠のある方法はないかなぁ……

 

――という訳で、今回ご紹介する本がこちら!

 
 

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神経学的にいうと、初期のアルツハイマー病や軽度の脳梗塞を除けば、単語や名前が思い出せないとき、脳では人生に不満や停滞を感じている時と同じことが起きている。必死で思い出そうと意識を集中させることで思い出せることはまずありえない。むしろ、その単語や名前が余計に思い出せなくなる。

(中略)

ところが、10分か1時間くらいたって、思い出そうとしていた単語や名前がパッと頭に浮かんでくることがある。まるで奇跡のようだが、実はある心理的・神経的プロセスが作用していることがわかっている。しかも、ちょっとした心の変化で、そのプロセスを再現することが出来る。(p176)

 

著者のスリニ・ピレイ先生はハーバード・メディカル・スクールの精神医学臨床准教授で、ハーバード・ビジネス・スクールなどで教鞭を取っています。

 

今回の本のキーワードは、ずばり「非集中」

彼の非集中への原体験は、ハーバード医学大学院の2年生の頃、成績が落ちてしまったことがきっかけでした。1年生時はオールAの優等生だったのですが、2年になって勉強量が一気に増え、がくんと成績が落ちてしまったのです。夜中まで勉強しても、まったく成績は上がらず、誰よりも勉強と研究に時間を費やしても、集中して頑張れば頑張るほど、状況は悪くなるばかりでした。

 

追い詰められた彼は、ただがむしゃらに勉強するのをやめ、賢く勉強することを決心しました。

 

具体的には、

・45分勉強するたび、簡単な休憩をとる

・学業のことを忘れて友人と過ごす時間を増やした

・猛勉強する前はたっぷり睡眠をとった

・1日2回、20分の瞑想も始めた。

 

すると、体力が回復し、成績も改善。最終的には、またクラスでトップになったそうです。

 

集中力が必要、というのは、言われるまでもなく皆が分かっていることだと思います。

何かに集中する(精神的な意味でも、時間や労力的な意味でも)ことがなければ、何も成し遂げることは出来ないでしょう。

 

しかし、集中するということは、他のことを切り捨てる、という面を含んでいます。

 

□非注意性盲目(注目しているもの以外見えなくなる)

 

集中力とは「脳の懐中電灯」だ。見るべき場所が分かっているなら、目の前の一点を明るく照らし出してくれる光線はとてつもなく役に立つ。だがそのぶん、周辺視野や、暗がり全体を照らし出す光は犠牲になる。極端な場合、心理学の用語で「非注意性盲目」と呼ばれる現象が起こる。こうなると、すべてのものには注目できないという単純な理由から一部のものが見えなくなる。脳が集中する対象を選ぶと、あなたに悪影響を及ぼすこともあるのだ。

たとえば、1995年にこんな出来事があった。ボストンの警官がある事件の容疑者を追跡している途中、たまたま別の暴行事件に出くわしたのだが気づかずにそのまま素通りしてしまった。警官は裁判で暴行現場を見逃したと主張したが、陪審員たちはその話を信じなかった。結局、警官は偽証と司法妨害の罪で2年以上の懲役と罰金を言い渡された。

だが、警官が容疑者を追うことに集中しすぎるあまり、非注意性盲目に陥っていたのではないかと考えた研究者たちは、現場の再現実験を行った。その結果、被験者の多くが同じように周辺視野のなかで起きた暴行現場を見逃した。暴行に気づいた被験者は、夜間ではわずか35%、日中でも56%にとどまった。(v)

 

先述の名前や単語が出てこない状況では、「名前が出てこない!」という感覚にばかり集中してしまって、意識の外側にある名前を記憶の中から救い上げることが出来なくなっている状態です。

 

またピレイ先生の例で言うと、「努力すること」ばかりに意識が集中し、それ以外の選択肢が見えなくなってしまっています。

 

おそらく、がむしゃらに頑張ることだけに集中してしまって、結果に上手くつながらない、という人もいらっしゃるのではないでしょうか。

(何を隠そう、この私の事です)

 

では、この状況を脱する手段というのはあるのでしょうか?

 

――それこそまさに、本書の肝である「非集中」というものです。

 

□デフォルトモードネットワークの活用

 

「非集中」とは、言葉こそ変わっていますが、本質的には前々回の記事でご紹介した、デフォルトモードネットワークが働いている状態のことを指します。

 

デフォルトモードネットワークというのは、安静時に活性化する脳の回路で、これが作用することにより、自動で記憶や思考の整理などが行われている、と考えられています。

(詳しくは前々回の記事を参照)

 

そこでやり取りされる情報量は凄まじく、本書でも、

 

意識的な脳は、せいぜい毎秒60ビットの速度でしか情報を処理できないが、無意識の脳はそれよりもずっと高速で情報を処理する。一説では毎秒1100万ビットにもなるといわれている。具体的な数値に関しては諸説あるが、無意識の脳の情報処理速度の方がはるかに高いという点ではほぼ専門家の見解が一致している。(p192)

 

と紹介されています。

 

先の「名前が思い出せなかったのに、後からふと思い出せる」あの瞬間にも非集中、無意識の力が働いています。デフォルトモードネットワークが働くことにより、「漠然とした記憶を掘り起こす(p13)」ことが出来るのです。

 

また繰り返しになりますが、

 

単語や名前が思い出せないとき、脳では人生に不満や停滞を感じている時と同じことが起きている。必死で思い出そうと意識を集中させることで思い出せることはまずありえない。むしろ、その単語や名前が余計に思い出せなくなる。(p176)

 

『名前が思い出せないときと、人生に不満や停滞を感じているときが、脳内では同じ処理』と聞くと不思議な感じがするかもしれません。

 

しかし前提条件として、そもそも私たちの思考とは、「元からあった動物的な脳のシステムを基礎にして、構築されている」と考えられています。

 

実際、脳を調べると、行動と心理作用に一見関係のない脳回路が共用されているという例にしばしば出くわします。

苦みと嫌悪、痛覚と心痛、眼球運動と暗算などの関係性は良い例です。

(『脳には妙なクセがある』/池谷裕二 著 より引用)

 

別の本からの引用になりますが、元々脳は思考のための器官ではなく、動物たちが身体感覚を制御するための神経の塊に過ぎませんでした。

人間は、そのシステムを応用して「思考」というものを編み出しているに過ぎない、という説があります。

 

そして今回の件では、

・脳の動きとしては、名前を思い出せないとき=人生に不満や停滞を感じているとき

・名前を思い出せないときは、「まあ後から思い出すだろ」と放置することで、後から思い出すことがある。

・人生に不満や停滞を感じている時も、同じような方法で何かしらの対処できないか?

 

という論の流れが生まれます。

 

心の行き詰まりを抜け出す第一歩は、視点の切り替えだ。

あなた自身の置かれている苦境について思案するのは、かえって怒り、不安、悲しみを駆り立てるだけだ。むしろあなた自身の状況に対して感情的に中立な態度(=非集中)でいるほうがいい。私はこれを「可能性マインドセットへの切り替え」と呼んでいる。単語や名前が思い出せないときは、思い出さなければという執着からあなた自身を解放し、その内思い出すだろうと気楽に構えていれば、その単語や名前がふと脳裏に浮かんでくる。これが可能性マインドセットの一例だ。(p177)

 

何かしら悩みがある時に、それについて考え続けるとドツボにはまります。

将来が不安だ、と考え始めると、次々に悪い考えが想起され身動きが取れなくなったりとかありますよね。

(私はしょっちゅうあります)

 

そんな時に周りの人は「まあまあ、深く考えんなよ」とか気楽な事を言ってきて、イラっとしちゃったりなんかもしますが、実はそのアドバイスにも一定の価値があるようです。

 

作り物の楽観主義は、その言葉のとおり偽物だ。偽物の楽観主義は、「物事の明るい面を見なさい」とあなたにアドバイスしたり、「きっとよくなりますよ」とあなたを安心させたりする。

一方、本物の楽観主義は、自分にかける言葉をほんの少し変えることから生まれる。「行き詰まりを抜け出すことは可能だ」とあなた自身に言い聞かせればいいのだ。この小さな表現の工夫で、メッセージの内容は大きく変わり、脳は変化に向かって動き始める。(p178)

 

巷の自己啓発書では、人生に行き詰まりのある時は、無理に物事の明るい面を見ようと集中させたりします。

しかし脳内では、名前を思い出せない時と同じ領域を用いている以上、それはあまり効果的ではありません。

(もっとも、明るい面に集中することは別の効果があるので、まったく無駄ということはありませんが)

 

一番必要なのは、「まあ名前なんて後から思い出せるか~」といった感じに悩みを手放すこと。

今回で言えば、「行き詰ってても抜け出せるわ~」と一旦、問題から頭を離すこと。

 

現在、行き詰っている問題を壁に例えると、過集中の状態は、壁に頭をグリグリ押し付けながら「問題の壁で前が見えない!もっとよく見なければ!」と言って、顔をもっと壁に押し付けるような行為です。

 

悩んだ時に必要なのは壁から離れる事。

いったん壁から離れて初めて、乗り越えられないか、迂回できないか、打破できないか、と思案する事が出来るのです。

 

 

□おわりに

 

「考えが煮詰まったときは、いったん考えから距離をおいてみる」なんてアドバイスは、今までの人生で散々聞いてきたことだと思いますが、実際にトラブルが起きてみると、対処に意識が集中してしまい、そんなアドバイスは脳から吹っ飛んでいたと思います。

 

それでは実にもったいない。

脳科学的にもオススメされている方法、かつ実行もたやすいので、是非とも生活に取り入れてみてください。

 

本書には他にも、「集中と非集中の脳のリズムの整え方」「創造力を呼び覚ます方法」「学習効果を最大化する方法」「マルチタスクのコツ」「心を整える方法」「自分の能力をより伸ばしていく方法」などが述べられています。

 

発想を高めるにはどのような手段が有効だったか? みたいな実験の結果等も触れられていますので、興味の湧いた方は是非ご入手ください。

 

では、また。

 

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