求道者の平穏への道標

うつ病歴約10年、退職3回した私が、「平穏な人生を歩みたい!」と手探りで進んでいく記録。自己啓発、ビジネス書の感想メインです。

~曖昧な説明を通じて成長する~ 『京大式 DEEP THINKING』(川上浩司)


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□はじめに

皆さま、お疲れ様です。

指導の仕方に悩む求道者です。

 

私は趣味で合気道をしているのですが、これがとても難しい。技も難しいですが教えるのがとにかく難しい。

指導は基本的に師範が行っており、初心者から有段者まで教えているのですが、とにかく教え方が抽象的。手が曲がっていたり、指先まで芯が通ったようになっていないと「手が死んでる!もっと指先から気を出すように!」と仰る。

 

……これが本当に難しいのだ。技術自体も難しいのだが、それを他人に伝授するのが本当に難しい。「技術を口頭で説明する」ことの難易度たるや。

「技術は見て覚えろ」などと職人気質な人は言うけれど、これは嫌がらせで言っている訳ではなくて、本当に言語化するのが難しいのだ。また、ケースバイケースなことが多すぎるので、基礎だけ与えてあとは独自に改良していくしかない、という側面もある。

 

 

無論これはあくまでも武道だから、趣味だからこそ許されることだ。

これが仕事になると、この人手不足、効率化が必要不可欠な世の中で、職人のように「見て覚えろ!」などと言っていられるほど余裕のある所はないだろう。

 

また、具体性もなく、「気合で売り上げを伸ばせ」と言っているマネージャーが居たら、倒産待ったなしだ。

 

こう考えると具体的指示は最適で、抽象的指示は最悪に感じる。

 

……だが、本当にそうだろうか? 抽象的指示にも何かしらのメリットがあるのではなかろうか?

 

――という訳で、本日紹介する本がこちら。

 

京大式 DEEP THINKING

(川上浩司)

 

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川上先生は、京都大学デザイン学ユニット特定教授であり、専門はシステムデザインで、「不便がもたらす益=不便益」について研究されている方です。

 

そして、その不便益の研究の一環として作成された「素数ものさし」(目盛りに素数のみが印字されたものさし)は、その特異性から話題を呼び、京都大学内のみでの発売にも関わらず、3万本以上の販売を記録している、という経歴の持ち主です。

(裏表紙の紹介より)

 

その中から、内容の一部をご紹介します。

 

□マスとプライベート向けの説明を分けること

 

本書の中には、「PC的な説明」「鉛筆の手書き的な説明」というワードが出てきます。

 

・「PC」的な説明=不特定多数の人(マス)に伝えるための方法

・「鉛筆の手書き」的な説明=特定個人(プライベート)に伝えるための方法

(p89)

 

 

 

こう考えると、「万人向けの話」というのは、解釈が狭義になるという点で第1章で述べた「PC的なアウトプット」である。

「誰が読んでも同じ意味に受け取れる」というのがPC的なアウトプットの利点であり、それは大勢に1つの考えを広める際(対マス)には有効に働く。

 たとえばPC的な説明は、こんな具合で展開する。

「飛行機に乗っていてトラブルが起きたら、自動的に下りてくる酸素マスクを着用して呼吸を確保し、前の座席の背に伏せるように頭を低くしましょう。不時着した場合、係員の指示に従い、靴を脱いで手ぶらで脱出してください」

 味気ないといえばそうだが、わかりやすいことは明らかだ。(p87)

 

では、「鉛筆的な説明」だとどうだろう。

「やばいと感じたら、上からツーッと降りてくるヤツをくっつけて。逆に苦しそうと感じても、とにかくつけてくださいね。で、息が苦しくないようなら、首をカクッとしといて。どこかに着陸したら、たぶん指示が来るんで、靴を脱ぎましょう。いくら高くてお気に入りの靴でも、あきらめなきゃダメですよ。足が臭くて気がひけるというそこのお父さんも、遠慮しないで脱いじゃって……」(p88)

 

どちらがお好みだろうか?

ビジネス的な観点から言えば、前者の方が好ましい。むしろ、「言葉が情報伝達」のためにあるなら、後者はあまり適当とは言い難い。伝えたい情報がかなり不鮮明だからだ。

 

□鉛筆的な説明のメリット

 

しかし、鉛筆的な説明にもメリットがある。

 

ところで舞妓さんの師匠は踊りの稽古をつけるとき、こんな指導をするそうだ。

「舞い散る雪を拾うように扇を動かしなさい」

 まさに実感に訴える「鉛筆的な説明」である。どう動かすのか、誰にでも単一的にわかるとは言い難い。(p92)

 

 筆者は、このような伝え方を「わざ言語」と呼ぶ。

 

「わざ言語」は完璧な再現性を求めるようなものではない。言った人と聞いた人お互いが了解すれば、それで成立するという情報伝達手段だ。

(中略)

わざ言語は「教えを受け取って自分なりに解釈し、経験に基づいて自分なりに再現する」というのが前提で指導がおこなわれる。(p93)

 

当然、これは同じ経験や知識があることが大前提だ。そもそもまったく型も知らない踊りの素人には、もっと具体的に言わなければならない。

 

その際の具体的とは、

 

なので、経験がなさそうな人には、わざ言語を用いない伝え方がいい。

「斜め45度に扇を傾けながら、初期値35度に曲げた肘を秒速3度のペースでさらに深く曲げなさい」

(p95)

 

のようになる。

この考えが必要なのが、ビジネス的な説明である。とくにジェネレーションギャップがある、また文化の差がある外国人等を国内で活用するなら、このような考え方が必要だ。

 

無論、鉛筆的な説明が無価値だとは言わない。

 

だが、鉛筆的な説明をして「まっすぐな道からずれる」ことが許されているのが踊りの世界だし、それが連綿と続いて文化の伝承になっている。なぜなら、文化には100%の再現性は必要なく、むしろ妨げになるからだ。

 仮に「絶対的に正しいピアノの弾き方」というのがあり、再現性が高いPC的な説明でピアニストの卵に指導して、全員が同じ弾き方になったとしよう。誰もが全く同じ解釈、同じ演奏法で曲を弾いたら、ピアニストという職業はなくなってしまう。プーニンもツィマーマンも存在しなくなる。(p95)

 

武芸を嗜む私としては、とても示唆に富んだ文章だと思う。

同じ武芸の種類でも、「○○流」というやり方が色々ある。個々人がそれぞれにあったものを選んで出来る。型を元にしながら、それぞれの「奥義」を目指して歩んだ結果、流派が分かれるのだ。

 

たしかにPC的なアウトプットは客観的でわかりやすいが、話し手にとっての大切なものをしっかりつたえられているかといえば、そうでもない。

 なぜなら、深く考えれば考えるほど、その考えをありのままに伝えることは難しくなる。深い考えは時として抽象的で、解釈が多様なことも多いため、説明が分かりにくくなったり、どうしても曖昧な部分が残ったりするのだ。

 そのため、PC的なアウトプットは「わかりにくい部分」を省略する。しかし、「わかりにくい部分」にこそ、第0章で書いた「砂利に混じったダイヤモンド」という深く考えたすえのエッセンスが詰まっているものなのだ。(p90)

 

これらPC的な説明は非常に大事だ。このマニュアルがあるからこそ、全員が同じように行動できる。

だが、結局のところ、マニュアルにも限界がある。マニュアルで出来るのは一定の成果を出すだけで、それ以上の成果を出すには、マニュアル的な働き方から脱却しなければならない。ある意味、「型破り」でなければならないのだ。

 

ここで現代社会に目を向けてみよう。

アメリカの模倣で経済成長出来ていた時代はそれで良かったかもしれない。だが、既に行き詰りつつある日本でイノベーションを起こすのに必要なのは、何かの模倣やマニュアルではない。

 

いかにシステマチックに仕事をこなすことが声高に叫ばれていても、ビジネスパーソンに求められる答えは、課題や問題の解決に繋がり、かつ独自性や創造性のある「新しくてユニークな答え」であり、それこそが「できる人の答え」となることも多いのではないだろうか。

そうした答えを出すには、やはり「1つの正解」を求めるよりも、「さまざまな仮説」を連想的に出し、そこから「一番良い答え」を選ぶほうが役に立つ。

 

ここでお伝えしたいのだが、「深く考える」という営みなしに、有効な選択肢が複数生まれることはない。スピーディに出す答えが正解で、「1粒のダイヤモンド」ということもあるが、その確率は相当に低いはずだ。

いっぽう、深く考えた人の出す答えは、つねに砂や砂利やタイルのかけらやさまざまな石ころが混ざった「集まり」だ。そこにはダイヤモンドが混じっていることもあるし、混じっていないこともある。

ただし、ユニークな答えやダイヤモンドが含まれている可能性は、この「集まり」の中にこそあるのだ。(p36)

 

ここで、本のタイトルに繋がってくる。結局のところ、マニュアル的で表面的な考えだけでは、新しい発見は生まれてこない。

 

「深く考える」

 

それがこの本のポイントである。

 

□おわりに

 

という訳でこの本には「深く考える」、というキーワードを元に、「実感を大切にする」「数字と説得力」「プロセスの価値」「発想を得るには」などの内容に展開していきます。 

「実際に深く考えるにはどうしたら良いのか?」ということを具体的に知りたい場合には、是非とも本書を手に取って頂きたいと思います。

  

効率主義の世の中だからこそ、見直さなければならないことがあると思います。

この本は、その見直さねばならないものは何か?というものを考えさせてくれるものです。

 

気になった方は是非チェックしてみてください。

 

それでは、また次回。

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